ご挨拶

平野 俊夫
公益財団法人
大阪国際がん治療財団
理事長平野 俊夫

当財団は、大阪城を望む大手前地区にて、大阪初となる重粒子線がん治療施設である大阪重粒子線センターを運営しています。

今や、2人に1人はがんを患い、3人に1人はがんで亡くなる時代です。また人生100年時代を迎えて、今までの病気を治療することに重点を置いた医療から、「生活の質(QOL)」をより重要視する医療が求められています。このような時代において、がんに放射線を集中して照射でき、周辺の正常臓器への影響を少なく抑えることができる重粒子線がん治療は、QOL維持に優れるとともに、がん細胞殺傷効果も高い低侵襲ながん治療法です。
重粒子線がん治療装置は、私が2023年3月まで理事長を務めていました国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(量研/QST)の前身である放射線医学総合研究所において、1993年に世界で初めて開発に成功しました。そして、現在では大阪重粒子線センターを含めて国内7か所で重粒子線によるがん治療が行われています。

大阪重粒子線センターは、2018年の治療開始以来、初代理事長やセンター長をはじめ、職員が一丸となり、大阪はもちろん、日本や世界中のがん患者さんの治療にあたり、2023年6月末までに、3,000人を超える患者さんの治療を行ってきました。引き続き、当財団とセンターの職員が一丸となり、がんでは死なない「がん死ゼロ健康長寿社会」実現に向けて、重粒子線によるがん治療を推進していきたいと思います。

また、QSTをはじめ国内にある7つの重粒子線がん治療施設※と互いに協力して重粒子線がん治療を推進し、高齢化社会に貢献していく所存です。

皆様方におかれましては、引き続き、よろしくご指導、ご鞭撻、ご支援のほどお願いいたします。

※QST病院(千葉県)、兵庫県立粒子線医療センター、群馬大学医学部附属病院重粒子線医学センター、九州国際重粒子線がん治療センター(佐賀県)、神奈川県立がんセンター重粒子線治療施設、山形大学医学部東日本重粒子センター、当センターの7か所が稼働している。
(2023年6月末時点)

藤元 治朗
公益財団法人
大阪国際がん治療財団
副理事長

大阪重粒子線センター
センター長藤元 治朗

近年の医療技術・薬剤の発展に伴い、がん治療も手術・放射線治療・化学療法の各分野で日進月歩の進化を遂げつつあり、当センターでは強力かつ腫瘍選択的に照射可能な炭素イオンを用いた重粒子線治療を実施しています。重粒子線の特徴は粒子が重いことでX線や陽子線に比べ体内の線量分布に優れ、特に正常組織を傷つけることなくがん治療が可能です。

がん治療で重要な点はいかに治療効果をあげ、いかに副作用を抑えるか、という二律背反の目的を達成することです。しかし、これまでは治療後の生存率を最優先とし、患者様のQOL(クオリティーオブライフ:生活の質)についてはあまり重きを置かれない傾向にありました。成績が同等であれば非侵襲的治療(体に負担の少ない治療法)が選ばれる時代となり、重粒子線治療は痛みも伴わない治療で、入院も不要で、QOL維持に優れ、まさにこの目的に合致しています。

また、冒頭に述べましたように各がん治療領域の長足の進歩により、優れた治療法を組み合わせた「集学的治療」の時代になってまいりました。重粒子線単独治療に加え、同じがんでも複雑な症例・進行した症例には集学的治療が有効となってまいります。例えば重粒子線+化学療法がその一例です。がんの局所には強力ではあるが体に優しい重粒子線治療、それに加えて全身療法、または転移巣に対する化学療法を無理なく併用することが可能です。当センターでは各臓器のがん領域の専門医師が診察・治療にあたり、また迅速な治療開始を実施しており、最良の治療を提供できると信じております。